『茶美会 然』

時期 : 1992年 4月29日-30日
会場 : 原宿クエストホール
主催 : 茶美会文化研究所

茶美会『然』は、五十数名に及ぶ時代を代表するデザイナーやクリエイター、伝統工芸の作家たちが茶室や空間、茶道具のデザインを手がけ、それらを一堂に展示するイベントとして開催されました。客は懐石を食し、露地に見立てた通路を通って茶室へと誘われる形式であり、伊住政和を亭主として「新しい茶のかたち」を表現する為に再構成された茶事であったといえるでしょう。茶の湯を中心に伝統と現代が出会うことで、茶の湯文化の現在を考える企画となりました。

本企画は、グラフィックデザイナーの田中一光氏と伊住政和の出会いから始まりました。田中氏がデザイン仲間を集めて別荘で開催したパーティーに伊住が訪れた際のこと。必要な茶道具が揃っていない環境下、茶会をしようと盛り上がりました。その場にある道具を茶道具に見立て、伊住は庭に出て切り出した葉を水指の蓋に…と、そのようにして即興の茶会が創出されました。田中氏は茶の湯のクリエイティブな一面に接し、感銘を受けたといいます。この一会が『茶美会 然』の開催へと繋がるプロローグになりました。